小説「檸檬」の店、「八百卯」が閉店
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「その果物屋は私の知っていた範囲で最も好きな店であった」――。梶井基次郎(1901~32)の小説「檸檬(れもん)」で、 主人公がレモンを買った店のモデルとなった京都市中京区寺町二条の老舗(しにせ)果物店「八百卯(やおう)」が、25日に閉店した。小説の主人公が爆弾に 見立てたレモンを置いた同市内の書店「丸善」も05年に店を閉めており、相次ぐ閉店を惜しむファンが次々と八百卯の店先を訪れている。1879(明治12)年創業の八百卯は、25年に発表された「檸檬」をきっかけに、「檸檬の店」として親しまれてきた。昨秋、 4代目当主の村井義弘さんががんで急逝。関係者によると、親族が店を手伝っていたが、「責任者を立てられないのが現状。いいかげんな商売はできない」と閉 店を決断した。この関係者は「後々のことを考え、やむを得ずこういう形になった。お客様には感謝の気持ちでいっぱいです」と話す。シャッターには「檸檬の店で永きに渉(わた)り皆様のご愛顧を得て営業致して参りました」などと書かれた紙が張られている。店 には連日問い合わせの電話があるといい、閉店の張り紙に見入る家族連れや、携帯電話で店の写真を撮る若い女性の姿も見られる。

「丸善」の閉店は知っていたが、「八百卯」が最近まで営業を続けていたとは知らなかった。
それはさておき、「梶井基次郎」の文字を見てとても懐かしくなった。
学生時代から読書が嫌いだった私が最後まで読んだ数少ない文庫本のひとつだった。
岩波文庫「檸檬・冬の日」は今でも本棚にある。
現在あるのは実は2冊目。最初に買った本は引っ越しを繰り返しているうちに紛失してしまい、
その後に書店でたまたま目に留まって改めて買いなおした。
「檸檬」も良かったが、特に「城のある町にて」の中の一節がとても気に入っていた。

「私はお前にこんなものをやろうと思う。
一つはゼリーだ。ちょっとした人の足音にさえいくつもの波紋が起り、風が吹いてくると漣をたてる。
色は海の青色で——御覧そのなかをいくつも魚が泳いでいる。
もう一つは窓掛けだ。織物ではあるが秋草が茂っている叢になっている。またそこには見えないが、
色づきかけた銀杏の木がその上に生えている気持。風が来ると草がさわぐ。そして、御覧。
尺取虫が枝から枝を匍っている。
この二つをお前にあげる。まだ出来上がらないから待っているがいい、そして詰まらない時には、
ふっと思い出して見るがいい。きっと愉快になれるから」

何度読み返してもシビれる文章だ。
昔はこの文章を何度も読み返して暗誦できるほどだったが、もうすっかり忘れてしまっている。
歳のせいか・・・・?