YOMIURI ONLINE
ギフチョウ、奈良で絶滅の危機

 豊かな自然で観光客を集める奈良県御所市の葛城山頂付近で、「春の女神」とも呼ばれるギフチョウが数を大きく減らしている。
 同山の環境保全に取り組むNPOの調査によると、2004年に調査区域の約1・2ヘクタールで1051個あった卵は一昨年、213個にまで激減。昨年は400個に回復したが、いまも絶滅が心配されている。復活に向けて活動を続けるNPOに同行した。
 「大和葛城山の自然を大切にする会」(大阪府松原市)。今月上旬、代表の宮平絹枝さん(74)ら会員3人が、幼虫の餌にもなる食草ミヤコアオイの保護のため、遊歩道の脇に立ち入り禁止のロープを張る作業を行った。
 長さ200メートルのナイロンのロープを丹念に遊歩道沿いの杭の穴に通していく作業。気温は正午過ぎで0・5度。雪が舞い、ロープを持つ手がかじかむ。約1時間半をかけて1本目を通し終え、次のロープにかかる。作業は約7時間に及んだ。
 合間に、宮平さんが教えてくれた。「ほんの10年前には、春になるたび、ここで群れになって飛ぶ姿が見られたんですよ」
 ギフチョウは羽根を広げると約5センチ。黄色と黒のしま模様が特徴で、春にはカタクリやスミレの花から花へ、ゆったりと飛び回る。何匹ものギフチョウが春の訪れを喜ぶように舞う姿は、山の風物詩だったという。
 それが2008年には県のレッドデータブックで絶滅危惧種に指定された。編さんにかかわった広陵町の写真家伊藤ふくおさんは「開発や植林による植生の変化、放置林の増加などでミヤコアオイが減ったことが大きい」と話す。
 日本チョウ類保全協会(東京都)によると、ギフチョウは希少性や美しさから愛好家に人気で、同山産の標本が1匹1500円前後でインターネットなどで販売されるため、激減には乱獲の影響もあるという。
 同NPOは現在、ギフチョウを天然記念物に指定するなど採集を制限する措置を行政に求めている。
 宮平さんらを保護活動に駆り立てるのは「自分たちが昔見た光景を子供たちに見せてあげたい」との強い願いだ。「たくさんのギフチョウが舞う楽園のような光景をよみがえらせたい」と話す宮平さん。その日が来ることを強く願った。(宇野新平)

Wikipedia : ギフチョウ